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競馬 思い出の歴史

時代は移り変わる。けれども今も変わらぬことがある。それは武豊がトップを走り続けているということ。そして、彼は日々進歩しているということ。

永遠の絶対のハナ差 ダービー回想Ⅳ いざ、菊へ

  絶対にして永遠のハナ差。

マカヒキサトノダイヤモンドがほぼ同時にゴール板を駆け抜けた。暫くすると、掲示板の1着に「3」と表示され、第83代ダービー馬がマカヒキに決定した。同時に、それは、サトノダイヤモンドとクリストフの敗北を告げるものであった。

それはクリストフにとって、想定できた最も最悪のシナリオであり、最悪の瞬間であった。

 思えば、 2頭ともクリストフのお手馬であった。新馬から2度の5億円対決でロイカバードを破り、きさらぎ賞から皐月賞へ直行のダービーへのローテーションで迎えたサトノダイヤモンドと偉大なる父ディープインパクトと同じ若駒ステークス弥生賞という道を辿ってきたマカヒキ。クリストフの2頭のお手馬はどちらもクラシック戦線の有力馬1頭になっていた。というより、3強、4強と呼ばれる最有力候補の別格の2頭だった。どちらも3戦無敗で迎えた皐月賞を目指すことになった。彼はどちらに乗ることもできた。

 

彼は、サトノダイヤモンドに乗ると決めた。ダービーを勝つために。

 

当然の選択だった。マカヒキは父ディープインパクトを彷彿とさせる後方一気で勝ち上がって来た。展開によって左右される可能性がある。が、サトノは操縦性が高く、先行力もあり、気性も穏やかで、マカヒキに劣らない末脚がある筈だった。しかし、なかった。

マカヒキだけでなく、4強以外の8人気の馬にも差された。

 ディーマジェスティの戴冠。

それは、4強は然程、強くなかったということであった。少なくとも、ディーマジェスティより弱かった。けれども、クリストフにとって、それは重要なことではなかった。サトノダイヤモンドマカヒキより強くなかった。というより、マカヒキより弱かった。ということが最も重要であった。ローテーションが……というのは、言い訳過ぎない。最後の斬れ味が確実に違った。 マカヒキから1 1/4馬身離されての入線だった。

  “ダービーを勝つために”

その陣営の想いと期待が皐月賞馬と蛯名のダービー初制覇への期待には及ばないものの、皐月賞2着のマカヒキより人気にした。

 

レースはサトノ、マカヒキともに中団のほぼ同じ位置取りで進んでゆく。1000m通過は1分00の平均ペース。そして、直線を迎えると、2頭が共に上がって来た。残すはエアスピネルのみ。マカヒキエアスピネルの後ろで横にはサトノという絶望的状況になった。が、次の瞬間、万事決した。事件が起きた。

 器用な操縦性の高いサトノが外にヨレた。その瞬間、マカヒキの進路が開き、その後も外へ進み真っ直ぐ走っていた手応え抜群のマジェスティの進路も塞がれてしまった。ディーマジェスティは2頭に僅か半馬身及ばず、サトノはマカヒキにハナ差で敗れた。サトノはヨレたものの、降着にはならなかった。降着になったところでマジェスティは2着。またしても、蛯名の悲願は叶わなかった。ディーマジェスティ蛯名正義のダービー初制覇はサトノダイヤモンドに妨げられたと言っても過言ではない。しかし、サトノダイヤモンドとクリストフにとってそんなことはどうでも良かった。 

 ただ、サトノ はマカヒキに完敗だった。それはサトノが操縦性が高くないという証明であった。レース後陣営は落鉄を言い訳にしていたが、陣営はそう言うしかなかった。だが、落鉄かどうかはサトノダイヤモンドにとって、クリストフにとってどうでもいいことであった。事実はマカヒキサトノダイヤモンドは敗れた。ということだけである。マカヒキは第83代ダービー馬になったが、サトノダイヤモンドはダービー馬にはなれなかった。 マカヒキのダービー制覇というサクセスストーリーの脇役の1頭であった。マカヒキと17頭の1頭でしかなかった。マカヒキを見捨てマカヒキに負けるというなんとも残酷な結末であった。 しかも、操縦性が高いという理由で選んだサトノダイヤモンドがヨレるというクリストフにとって最悪の形であった。 事実は小説よりも奇なりとは良く言ったものだ。操縦性が高い筈の馬がヨレて負けた。あのダービーから半年。サトノダイヤモンドは最後の一冠をまたしても逃してしまうのか。