どうせ、ムーアの手柄だ
どうせ、ムーアの手柄だ
彼女がGⅠ馬になっても、何一つ、不思議なことはない。彼女にはそれだけのポテンシャルがある。彼女は去年、前哨戦とはいえ、ローズSでミッキークイーンやレッツゴードンキ、そして、クイーンズリングを破ったのだ。能力がある。なければ、GⅠ馬に勝つことなど不可能だ。彼女にはそれだけの能力があるのだ。GⅠ馬に成り得るだけの能力は確実にある。けれども……。
けれども、きっと、いや、確実に、彼女が今日、GⅠ馬になっても、人はそれを彼女自身の力で掴んだものだとは評価しない。皆、口を揃えこう言うだろう。
“さすが、ライアン・ムーア。世界トップジョッキーは違う”
と。名手ライアン・ムーアの引き出した能力として、世界トップクラスの一流ジョッキーの卓越した技術、名手の成せる技巧、数ある外国人ジョッキーの伝説の一つとしてのみ語られることになるのだろう。世界は……。名手は……。そうとしか語られなくなるのだろう。そして、また、国内のジョッキーを育てずに海外からの助っ人に頼る傾向が益々強まるのだろう。無論、GⅠ1勝で終わらなければいいだけなのだが。
タッチングスピーチは強い。けれども、目黒記念はクリプトグラムの0.4秒で6着、宝塚記念はマリアライトの1.5秒で12着。GⅠで3着も難しいと思わせる様な戦績。馬券圏内ならば、名手ムーアの手腕と言わざるを得ない様な戦績。けれども、せめて、この記事の読者だけは分かってほしい。彼女のポテンシャルはかなり高いということを。クイーンズリングやマリアライトも怖い。けれども、彼女を忘れてはならない。GⅠ馬たちを一年前蹴散らした様に。今日、再び豪快な走りを。