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競馬 思い出の歴史

時代は移り変わる。けれども今も変わらぬことがある。それは武豊がトップを走り続けているということ。そして、彼は日々進歩しているということ。

ユタカへの最後の試練

 全GⅠ制覇まで、あとひとつ。残るは朝日杯のみ。

 これは競馬ファンなら誰もが知る事実。そして、来年になると大阪杯がGⅠ格上げとなる。これもまた、競馬ファンの誰もが知る事実。全GⅠ制覇という偉業をこの目で、いち早く目撃したいというのは、思いなのではないだろうか。武豊は全GⅠ制覇にタガノアシュラで挑む。タガノアシュラは良い馬であり、彼は強い。それ故かなり期待していた。

 が、11月18日のことである。

ミスエルテ襲来

ファンタジーステークスで異次元の末脚を繰り出し、最後は流すというディープ以来の衝撃を受けたミスエルテが出走するという一報。牡馬よりも強い。来年の牡馬クラシック戦線の主役かもしれないと思っていた彼女が参戦するという。エアスピネルが 強すぎるため、他が回避し、一勝馬リオンディーズが制した昨年。そして、今回は、牡馬が弱すぎると言われているための出走。理由は違えど、またしても、武豊に壁が立ちはだかる。今年は、奇しくも、親友の池江泰寿厩舎の管理馬である。最後に立ちはだかる壁、池江泰寿。日本トップの厩舎の送り出す最高傑作を打ち負かす他、全GⅠ制覇を成し遂げる術はない。しかし、タガノアシュラも強い。が、敵はミスエルテである。そして、かなり気性が荒い。札幌2歳では折り合いがつかず7着。前走は大逃げを打っての完勝。少頭数で行く馬がいなかったため平均ペースで逃げたタガノアシュラが大逃げの形となった。いや、もしかするとユタカの狙いだったかもしれない。しかし、同じ競馬では今回は差される。ただの逃げでは勝てない。彼らに残された手段はただ一つ。

それは、緻密に計算された大逃げ。アイネスフウジン中野栄治の様に。競馬四季報には平均ペースを表すMと書かれているが、このレースは“平均ペースの逃げ”という言葉では言い表せない。レースを完全に支配し、最初の1Fを12.8で行き、次を10.9それ以降12秒台を正確に刻み、1000m通過は59.8最後はライアンの追い込んで来た時には、既にゴール板を駆け抜けていた。ベテランにしかできない神懸かり的な騎乗。自然発生的に中野コールが沸いた。それまで競馬でジョッキーの名前が叫ばれることはなかった。勝利ジョッキーの名前を連呼する様になったのはこの時が最初だった。

武豊がどうした、横山がどうした俺はあいつらが子供の頃から馬に乗ってるんだ。”

 レース後に中野がそう語った90年のダービー。

 

あれから時は流れ、デビュー4年目だった武豊も、もう30年目のベテランである。数々の金字塔を打ち立て、数々の栄光を掴んで来た。今まで積み重ねて来たGⅠ勝利数は100を超える。ただ、そこに朝日杯の名前はない。競馬の神様が全GⅠ完全制覇を前にユタカへ与えた最後の試練、ミスエルテ。今まで磨き上げて来た熟練の技で大逃げを。そして、朝日杯を制し、全GⅠ完全制覇を。新たな武豊の伝説を。競馬サークルの伝説を。

 いざ、決戦