競馬 想い出の歴史

競馬といえば、武豊

有馬記念 凱旋門へと続く道

 「来年は海を越えなくてはいけないのかな?とも考えています。もうこれだけの馬になると、私個人の馬ではなく、ファンの皆さんの馬ですから、その期待に応えないと、と。」

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雑誌Numberの1月12日号の北島三郎オーナーへのインタビューにおいて、キタサンブラックについて、先の話になるのですが、と前置きした上で北島オーナーがそう語っていた。

 そして、続けて、

“だけど、まずは年内最後の有馬記念ですね。”

と、一言添えるのも忘れなかった。

 

 キタサンブラックは、日本競馬において現役最強馬となった。そして、海外、つまりは日本競馬界の悲願である凱旋門賞制覇に日本競馬の代表として、日の丸を、そして、競馬ファンの夢を想いを託される日本競馬界を背負って立つ存在となった。

 けれども。北島オーナーの言う様に、先ず、明日の有馬である。明日どう戦うか。いや、どう勝つかと言うべきかもしれない。不安要素は全くない。武士沢が行こうと、横典が行こうと、大逃げを打たれようと、ノブレスが潰しに来ようと、17頭で徹底マークされようと、関係ない。何故なら、彼はキタサンブラックだから。別に逃げたい馬がいれば逃げさせればいい。自分のペースを守れば、ブラックの競馬をすれば、負けることはない。必ず勝つ。ブラックに競りかければ、競りかけた馬が潰れるだけだ。ブラックは何しろ彼は、あの幾多の名馬を苦しめた淀の3200を逃げ切ったのだから。そして、あれだけ前が総崩れした宝塚で、3着に残ったのだから。彼はそれだけのスタミナを持っている。逃げて、上がり36秒を切る。他の馬には勝ち目はない。サトノダイヤモンドが先行しようと、関係ない。スタミナ勝負に持ち込めばいい。ブラックとスタミナ勝負で勝てるはずがない。スタミナ勝負に持ち込めば、勝ったも同然である。逃げられないなら、オグリのラストランの様に3コーナーから捲ればいい。そしてオペラオーの様に包まれることもない。何故なら鞍上が、武豊だから。

 が、唯一不安要素があるとすれば、有馬に限れば、武豊わずか2勝しかしていない。マックにブライアン、マーベラスサンデーエアグルーヴスペシャルウィークディープインパクトという名馬たちに乗ってきたことからすると、これは少し寂しい。勝ったのは、オグリキャップの伝説の引退レースと、ディープインパクトの引退レースのみ。中山2500という特異なコースを鑑みれば、無理もない。が、最早、それも関係ない。それらの馬に跨っていたのは、もう、10年以上も前の話である。武豊も円熟味を増し、最早、ベテラン域に達している。ユタカ自身が語る様に、今が一番彼の技術のレベルが高い。昨日より今日と、レジェンド武豊は日々、進化している。

 そしてもう、今のブラックは今までのブラックではない。接戦を制するのではなく、接戦にさえさせない。他に追随を許さない。JCでは最後は流していた。4歳秋にも関わらず、未だに底を見せない。それどころか、彼は戦う度に強くなり、より一層、進化してゆく。彼もまた、昨日より今日と、日々進化している。彼の総てが伝説となる。彼の総てのレースが、名馬伝説を語る手掛かりへとなるだろう。我々はキタサンブラックという日高の一中小牧場の歴史的、世界的名馬の栄光への軌跡の物語の目撃者のひとりである。

完璧を意味するサラブレッド。ホースマンの追い求めた理想のサラブレッドに、彼はなりつつある。だが、未だ成長の途上である。未だ、道半ば。これから、もっと偉大な私たちの想像もつかない様なサラブレッドへと、世界最強馬へと飛躍してゆくだろう。そのとき我々は、日高から、中小から名馬が生まれたことを伝えて行かねばならない。忘れてはならない。競馬を変えるのは裾野であることを。

日本競馬のトップとして、フランスへ、凱旋門へ行くために。先ず、明日、勝利を。圧勝でなくともいい。ただ彼自身の競馬をすれば自ずと結果は出る。有馬記念制覇を。去年の雪辱を。一味も、二味も違うキタサンブラックを。彼の成長した姿を。格の違いを。現役最強馬として。王者として。キタサンブラックキタサンブラックであるために。