ポテンシャルは一番....... 日本ダービー回想Ⅲ
“ポテンシャルは一番”
上がり3F33.2
それが如実にこの言葉を物語っている。ダービーでメンバー最速の上がりを見せたことが。
けれども彼は、ダービー馬にはなれなかった。
“ポテンシャルは一番”
そう誰もが言っていた。朝日杯で完璧な競馬をして好位で抜け出したエアスピネルを差した時から。
けれども、3歳になると好位での競馬をして毎回掛かった。弥生賞、皐月賞で先行した。殊、皐月賞は好位につけて58.4という驚異的な前半1000mのタイムで掛かり気味で先頭に立ち直線半ばで力尽き5着。エアスピネルには先着したもののミルコの斜行があってのこと。という惨敗。3強と呼ばれていたが、着順だけを見ると大したことはなかったが、あれだけのハイペースで掛かって早め先頭に立ったことでスタミナをかなり消耗したにも関わらず4着で入線したからポテンシャルは高い。というのが、大方の評価であった。
朝日杯での末脚。皐月賞で証明したスタミナ。
“ポテンシャルは一番”
誰もが思った。 けれども、それは一つの決して無視できない大きな課題を克服するのが、このハイレベルな世代で勝ち抜く必須条件であり、誰もが思ったことであろう。
“掛からなければ”
と。しかし、弥生賞、皐月賞を見る限り掛からないとはとても言えなかった。
でも、彼は、掛からなかった。けれども、ダービー馬にはなれなかった。
皐月賞では、「全然ダメだった。上手く乗れなかった。」とミルコ。ダービーでは折り合いに終始して後方待機からの末脚に賭けた。末脚は爆発した。が、エアスピネルにも先着できなかった。上がり3F33.2だった。勝ち馬マカヒキと3着のディーマジェスティが上がり3F33.3で、2着のサトノダイヤモンドが33.4だった。位置取りの差だった。でも、リオンディーズに先行させることはありえなかった。後方待機は正しかった。もう少し早く前が開けば...。もう少し前で競馬ができれば…。上がりがメンバー最速であるから、ミルコが完璧ではなかったということ。ミルコによってダービー馬にはなれなかった。これは紛れもない事実である。
最も運の強い馬が勝つ
とダービーは言われる。これは28頭立てだった頃の言葉だが、今回のダービーはこの言葉についてとても考えさせられるダービーであった。サトノダイヤモンドのハナ差。蛯名正義の半馬身差。そして、リオンディーズの上がり33.2。
最も運の強い馬が勝つ
シーザリオの仔は運が悪いのであろうか。エピファネイアの半弟。エピファネイアの半弟と聞いた時ダービーは切りだと思った。運が悪い。エピファネイアは福永祐一によってダービー馬への道を絶たれ、リオンディーズはミルコ・デムーロによってダービー馬への道を絶たれた。この血統はダービーに向かないらしい。エピファネイアのダービーはキズナの勝利であると同時に福永祐一の敗北であった。今回もまた、ジョッキーの敗北であった。
結局、リオンディーズは才能の片鱗を見せつつも、遂に、3歳春にG1を勝てなかった。彼が、再びG1のウィナーズサークルで見ることはあるのだろうか。